二人のコック

‪昔あるところに二人のコックがいました。一人はとてもレシピに詳しく、もう一人はあまりレシピを知りませんでした。レシピを知らないコックはその時ある食材を使ってなんとか料理していましたが、それを見ていたレシピに詳しいコックは、「そんな料理はないぞ。食材が揃ってないのにおいしい料理なん‪て作れる訳がない」と言ってレシピを知らないコックをバカにしていました。‬

‪そんなある日、一人の旅人が町外れにある二人のお店に閉店間際にやって来ました。旅人はとてもお腹を空かせており、今すぐ何か出してくれないかと頼んできました。レシピに詳しいコックは「閉店前で十分な食材が無いから料理は作れない」と言って旅人のお願いを聞こうとはしませんでした。レシピを知らないコックは「残り物しかないからそんなにまともな物は出せないかもしれないけれど少しだけ待ってください」と言って余った食材で作った料理を旅人に出しました。それは名前をつけることはできないような料理でしたが、ひどく腹を好かせていた‬旅人にとっては十分においしく、旅人はたいそう喜び去っていきました。

数日後、二人のお店にその旅人がたくさんの付き人を連れてやって来ました。なんとあの旅人は王様だったのです。王様は「あの時は助けてくれてありがとう。あの時食べた料理がとてもおいしかったので、ぜひもう一度あなたの料理が食べたいと思ってな。都に君のお店を用意したのでぜひそこで料理を作ってくれないか?」と頼んできました。レシピを知らないコックは喜んで王様のお願いを受け、都のお店で料理を出しました。都のお店には豊富な食材とレシピが用意されていたので、レシピを知らないコックは日を追うごとにレシピを覚え、豊富な食材でとてもおいしい料理を作ったので、そのお店は人が絶えませんでしたとさ。